【開発効率爆上げ】curl, wget, HTTPie, Postman徹底比較!CLIツール使い分け戦略

あなたのCLIツール、本当に最適?

「とりあえず curl を使っているけど、もっと良いツールがあるのでは?」
wgetcurl って、一体何が違うんだろう?」
「APIをちょっと試したいだけなのに、Postmanを立ち上げるのは大袈裟すぎる…」

もしあなたが一度でもこう感じたことがあるなら、この記事はまさにあなたのためのものです。

優れた開発者は、一つの道具に固執しません。最高の仕事をするためには、状況に応じて最適な道具を選ぶ「目」を持つことが不可欠です。金槌ですべてのネジを締めようとはしないのと同じように、HTTP通信の世界にも、それぞれに得意分野を持つ素晴らしいツールが存在します。

なぜ使い分けが重要なのか?ツールの「哲学」を理解する

この記事を読み終える頃には、あなたは curlwgetHTTPie、そしてPostmanといったツールたちの「哲学」を理解し、「なんとなく」ではなく、明確な意図を持ってツールを使い分けることができるようになっています。あなたの開発ツールボックスを整理し、日々の生産性をもう一段階引き上げるための、ピースがここにあります。


対象読者

  • curl の基本をマスターし、次のステップに進みたい方
  • wgetHTTPie といったツールとの違いが気になっている方
  • CLIでの開発効率をさらに高めたいと願うすべての開発者
  • チームに新しいツールを提案するための、明確な根拠を整理したい方

動作検証環境

この記事で紹介するcurlコマンドの動作は、以下の環境で検証しています。

  • OS: Ubuntu 24.04.3 LTS
  • ハードウェア: VAIO VJP131

目次


curl:スクリプティングと自動化の万能選手

curl の設計思想は、「何でもできること」 そして 「他のツールと連携すること」 にあります。
単体で完結するのではなく、Unixの哲学に則り、パイプ(|)やリダイレクト(>)を通じて、jqgrepawk といった他の強力なコマンドラインツールと組み合わせることで、その真価を発揮します。
レクトリサービスの操作まで、幅広いタスクをコマンドラインから実行できることを意味します。

# 例: 天気予報APIの結果から、明日の天気だけを抽出する
# - `curl` でAPIにリクエストを送信し、JSON形式のレスポンスを取得
# - `jq` コマンドでJSONをパースし、明日の天気コード(配列の2番目の要素)を抽出
curl "https://api.open-meteo.com/v1/forecast?latitude=35.6895&longitude=139.6917&daily=weathercode" | jq '.daily.weathercode[1]'

# 例: ベーシック認証を伴うAPIリクエスト
# - `-u` オプションでユーザー名とパスワードを指定
curl -u "user:password" https://api.example.com/data

# 例: ファイルをアップロードする (POSTリクエスト)
# - `-X POST` でPOSTメソッドを指定
# - `-F` オプションでフォームデータを送信。`@` をつけるとファイルの内容を送信
curl -X POST -F "file=@/path/to/your/file.txt" https://api.example.com/upload

この「組み合わせる力」こそが、curl を自動化タスクに欠かせない存在にしているのです。

[NOTE]
curl は "Client for URLs" の略です。その名の通り、HTTP/HTTPSだけでなく、FTP, FTPS, SCP, SFTP, SMTP, SMTPS, POP3, POP3S, IMAP, IMAPS, LDAP, LDAPSなど、非常に多くのプロトコルに対応しています。これは、curl の「何でもできる」という設計思想を体現しています。
curlにおける、データ取得と加工イメージ
curlにおける、データ取得とファイル保存イメージ
[著者の経験談]
チームでは、CI/CDパイプラインの健全性を保つために curl が大活躍しています。デプロイ後のアプリケーションに対してヘルスチェックエンドポイントを叩いたり、外部APIから設定情報を取得したりするスクリプトは、すべて curl がベースです。そのシンプルさと、どんな環境でも実行できる移植性の高さは、自動化の土台として絶大な信頼感があります。
[CAUTION]
セキュリティに関する注意点: curl で認証情報(ユーザー名、パスワード、APIキーなど)を直接コマンドラインに記述すると、コマンド履歴に残ったり、他のユーザーから見られたりするリスクがあります。機密情報を扱う際は、環境変数を使用したり、設定ファイルから読み込んだり、対話的に入力させるなどの対策を講じましょう。特にCI/CD環境では、シークレット管理ツール(例: HashiCorp Vault, AWS Secrets Manager)との連携を検討してください。

例: FTPサーバーからファイルをダウンロードする

  • -u オプションでFTPサーバーの認証情報を指定
  • -o オプションでダウンロードしたファイルの保存名を指定
curl -u "username:password" ftp://ftp.example.com/path/to/file.txt -o downloaded_file.txt

例: SMTPサーバー経由でメールを送信する

# - `--mail-from` で送信元アドレス、`--mail-rcpt` で宛先アドレスを指定
# - `-T` オプションで送信するメール本文ファイル、`-u` で認証情報を指定
# 実際にはメール本文をファイルに記述し、-Tオプションで指定します
curl smtp://smtp.example.com --mail-from "sender@example.com" --mail-rcpt "recipient@example.com" -T email_body.txt -u "username:password"

wget:堅牢なファイルダウンロードのスペシャリスト

次は、curl とよく比較される wget です。もし curl が万能ナイフなら、wget「ダウンロードに特化した電動ドリル」 と言えます。

wget の設計思想は、「堅牢なファイルダウンロード」 です。その最大の特徴は、Webサイトを再帰的に(リンクを辿って)丸ごとダウンロードする機能や、ネットワークが不安定な状況でもダウンロードを自動でリトライしてくれる機能にあります。

# 指定したサイトの全ページを、リンク構造を保ったままダウンロードする
# - `--recursive` でリンクを辿って再帰的にダウンロード
# - `--no-parent` で親ディレクトリに遡らないようにする
wget --recursive --no-parent https://example.com/docs/

# 例: プロキシ経由でファイルをダウンロードする
# - `-e` オプションで環境変数を設定し、プロキシを使用
wget -e use_proxy=yes -e http_proxy=http://your_proxy_server:port/ https://example.com/large_file.zip

curlwget の主な違いを整理してみます。

特徴curlwget
主な用途スクリプティング、APIテストファイル、Webサイトのダウンロード
デフォルトの出力標準出力(画面)ファイル
再帰ダウンロード不可得意
リトライ機能オプションで指定デフォルトで有効
curlとwgetの比較
[TIP]
wget を使えば、オンラインのドキュメントサイトを丸ごと手元にダウンロードして、オフライン環境でじっくり読む、といった使い方が可能です。飛行機での移動中など、ネットワークが使えない場面で重宝しますよ。
[CAUTION]
セキュリティに関する注意点: wget でWebサイトを再帰的にダウンロードする際、悪意のあるサイトや信頼できないサイトからのダウンロードは注意が必要です。不正なスクリプトやマルウェアがダウンロードされるリスクがあります。また、--no-check-certificate オプションの使用は、SSL/TLS証明書の検証を無効にするため、中間者攻撃のリスクを高めます。信頼できるソースからのみダウンロードし、セキュリティオプションの利用は慎重に行いましょう。

HTTPie:人間中心設計のAPIテストツール

curl でAPIをテストしていると、こんな風に感じませんか?

  • 「JSONのレスポンスが長すぎて読みにくい…」
  • 「ヘッダーを指定する -H オプション、毎回書くのが少し面倒…」

そんな悩みを解決してくれるのが、「人間に優しいAPIテストツール」HTTPie です。

HTTPie の哲学は、「人間にとっての圧倒的な使いやすさ」。開発者がAPIと対話する際の体験を第一に考えて設計されています。

HTTPieとcurlでのAPIテストの比較

例えば、jsonplaceholder.typicode.com にPOSTリクエストを送る場合を比較してみましょう。

curl の場合:

curl -X POST -H "Content-Type: application/json" -d '{"title": "foo", "body": "bar", "userId": 1}' https://jsonplaceholder.typicode.com/posts

HTTPie の場合:

# - `POST` メソッドを指定
# - `title='foo'` のように `key=value` 形式でデータを指定
# - `userId:=1` のように `:='` を使うとJSONの数値として扱われる
http POST https://jsonplaceholder.typicode.com/posts title='foo' body='bar' userId:=1

HTTPie の方が、はるかに直感的でタイプ量も少ないことがわかります。さらに、HTTPie はデフォルトでレスポンスをシンタックスハイライトし、JSONを整形して表示してくれます。これにより、APIのレスポンスを視覚的に素早く把握できるのです。

例: ヘッダーを指定してGETリクエスト

  • GET メソッドを指定
  • Header:Value 形式でヘッダーを指定
http GET https://api.github.com/users/octocat Accept:application/vnd.github.com+json

例: ファイルをアップロードする

  • @ をつけるとファイルの内容をリクエストボディとして送信
http POST https://api.example.com/upload @/path/to/your/file.txt
[CAUTION]
セキュリティに関する注意点: HTTPie はAPIテストに非常に便利ですが、本番環境の機密性の高いAPIに対して、安易に認証情報をハードコードしたり、不適切なリクエストを送信したりしないよう注意が必要です。特に、テスト環境と本番環境の認証情報を混同しないように、環境変数や設定ファイルで適切に管理しましょう。

対話的にAPIを叩き、挙動を確認するような場面では、HTTPie の使いやすさが光ります!


CLI vs GUI:Postman/Insomniaはいつ使うべきか?

PostmanやInsomniaといったGUIのAPIクライアントは、特に以下のような場面で強力な味方となります。

  • 複雑なAPIの体系的なテスト: 複数のエンドポイントにまたがるシナリオテストや、詳細なテストスクリプトを書きたい場合。
  • チームでの共同作業: APIリクエストのコレクション(設定集)を作成し、チームメンバーと共有したい場合。
  • 環境ごとの変数管理: 開発、ステージング、本番環境で異なるAPIエンドポイントや認証情報を、簡単に切り替えたい場合。
  • 履歴とドキュメント: 過去のリクエスト履歴をGUIで一覧したり、API仕様書を自動生成したりしたい場合。

[!NOTE]
多くのGUIツールには、リクエストを curl コマンドとしてエクスポートする機能が備わっています。GUIで試行錯誤したリクエストを、後からCI/CDのスクリプトに組み込む、といった連携も可能です。


[皆さんへの問いかけ]
さて、ここまでCLIツールとGUIツールのそれぞれの強みを見てきました。あなたの普段の業務では、どちらのツールを使う場面が多いでしょうか?そして、それはなぜですか?ぜひ、少し立ち止まって考えてみてください。この問いかけが、あなたのツール選択の「なぜ?」を深掘りするきっかけになれば幸いです。


【実践】あなたのタスクに最適なツールを見つけるフローチャート

さて、様々なツールを見てきました。結局、私たちはこれらをどう使い分ければ良いのでしょうか?

完璧な答えはありませんが、筆者はこんな「マイルール」でツールボックスを整理しています。

適なツールを見つけるフローチャート

このフローチャートは、あくまで一つの指針です。大切なのは、それぞれのツールの「思想」を理解し、あなたの目の前にあるタスクの性質に合わせて、最も効率的なツールを意識的に選択することです。


よくある質問(FAQ):curlwgetHTTPie の疑問を解消

Q1: HTTPie をわざわざインストールする価値はありますか?
A1: はい、あります。特にAPI開発やテストを頻繁に行うなら、その生産性の向上は絶大です。curl の複雑なオプションを覚える時間を、より本質的な開発作業に使うことができます。

[インストール方法]

  • macOS: brew install httpie
  • Ubuntu/Debian: sudo apt update && sudo apt install httpie
  • Windows (WSL): 上記Linuxコマンドを使用
  • Python (pip): pip install httpie (Python環境がある場合)

curlwget は多くのOSにプリインストールされていますが、もしインストールされていない場合は、各OSのパッケージマネージャー(macOSならHomebrew、Ubuntuならaptなど)を使って簡単に導入できます。

Q2: curl だけで全部やるのはダメですか?
A2: もちろんダメではありません!curl は非常にパワフルで、理論上はほとんどのことが可能です。しかし、「できる」ことと「効率的か」は別の話です。特定のタスクに特化したツールを使うことで、より速く、より快適に作業を進められる場面は多いでしょう。

Q3: wgetcurl -O の一番の違いは何ですか?
A3: curl -O はURLのファイル名を使って保存するだけで、wget のような再帰ダウンロードや自動リトライは行いません。Webページを構成する画像やCSSまで含めて丸ごとダウンロードしたい場合は、wget の独壇場です。

Q4: Postmanのコレクションを curl で再利用できますか?
A4: はい、可能です。Postmanにはコレクション全体や個別のリクエストを curl コマンドとしてエクスポートする機能があります。GUIで作成したリクエストを、CI/CDパイプラインのスクリプトに簡単に組み込めます。


まとめ:道具を制する者が、開発を制す

今回は、curlやその仲間たちを知ることで、さらに視野を広げました。

  • curl: スクリプティングと自動化の王様。他のツールと連携させることで真価を発揮。
  • wget: ファイルダウンロードのスペシャリスト。サイトのミラーリングや堅牢なダウンロードが得意。
  • HTTPie: 人間に優しい対話型ツール。APIの手動テストを快適にする。
  • Postman/Insomnia: チームでの体系的なAPI管理とテストのためのGUIの要塞。

道具は、それ自体が良い・悪いと評価されるものではなく、使い手の目的と、道具の特性が合致したときに、初めて最高のパフォーマンスが生まれます。

次のステップ:今日から始めるCLIツール活用術

もしあなたがまだ HTTPie を試したことがないなら、ぜひ今日インストールしてみてください。そして、いつも curl で叩いているAPIを HTTPie で叩いてみましょう。そのシンタックスの簡潔さと、色鮮やかな出力に、きっと驚きます。それが、あなたのツールのレパートリーを増やす、素晴らしい第一歩となります。

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参考文献:


本記事をご利用いただくにあたって

この記事は、公開時点(2025年9月)の情報に基づき、正確な情報を提供するよう努めています。
しかし、本記事で解説するソフトウェアやサービスの仕様は日々更新されるため、記事内で紹介している画面や手順が、ご覧いただいている時点では変更されている可能性があります。
もし内容に相違がある場合は、各サービスの最新の公式ドキュメントも併せてご参照ください。本記事の情報を利用される際は、ご自身の判断と責任においてお願いいたします。


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