
本記事の目的
この記事では、macOS Sequoia に Git を導入し、基本的な使い方を学ぶための手順を詳しく解説します。
初心者でもわかりやすいように、具体的なコマンド例や実践的なユースケースを交えて Git の世界に入門する第一歩をサポートします。
この記事では、まずローカル環境の設定と操作方法に重点を置きます。
具体的には、リポジトリの初期化からコミット・ブランチ管理までをローカルで完結させ、後にリモートとの連携へと進める流れまでを解説します。
これらの操作はすべてローカルで完結できるため、初心者でも安心して Git を学び始められます。
リモートとの連携は今回扱いませんが、まずはローカル環境をしっかり理解することが重要です。
本記事の対象読者
- Gitについて全く知らない初心者
- macOS Sequoiaを使用しているが、まだGitをインストールしていない人
- バージョン管理の必要性を理解しており、実践的な導入手順を求める人
- プログラミングや開発を始めようとしている人
もくじ
Gitの概要紹介
Gitは、ソフトウェア開発においてコードの変更履歴を管理するための分散型バージョン管理システム(DVCS: Distributed Version Control System)です。
開発者は複数の人が同じコードを編集する際でも、変更内容を追跡・管理し、競合を防ぐことができます。
GitHubやGitLabなどのプラットフォームと組み合わせることで、チーム開発やオープンソースへの貢献も容易になります。
用語 | 説明 |
---|---|
リポジトリ | ソースコードの変更履歴を保存・管理するフォルダ(.git ディレクトリで設定が管理される) |
コミット | 作業中のファイルを「スナップショット」として保存する操作。例:git commit -m "初期設定" |
ブランチ | 別の作業ラインを作ることで、同時に複数人が開発できる仕組み。例:main , feature-login |
マージ | 2 つのブランチに分かれた変更を1 本に統合する操作。例:git merge feature-login |
リモート | GitHub/GitLab などサーバ上にあるリポジトリ。ローカルの変更を git push で送ったり、 git pull で取得したりする |
なぜGitを使うのか
以下では、Gitが提供する主なメリットを具体的に解説します。
初心者の皆さんが実際の開発でよく直面する問題に対して、gitを使うことで簡単かつ安全に解決できる方法を示しています。
- ドキュメント管理
テキスト(Markdown など)をバージョン管理することで、誰が何をしたかが明確になります。
発生する問題 | 解決方法 |
---|---|
変更履歴の追跡ができず、誰が何をしたか分からない | 変更内容を記録する仕組み(例:ファイルのバージョン管理)を使い、履歴から誰がどんな変更を行ったかを確認します。 |
複数のバージョンを同時に編集して競合が発生する | 作業を分けて進め、後でそれらを統合することで衝突を解消しやすくします。 |
- 変更履歴の追跡
バージョンを戻す操作が簡単で、過去の安定版へ復帰できます。
発生する問題 | 解決方法 |
---|---|
バグを発見した際に以前の安定版へ戻せない | 以前の状態を再現する手段(例:過去のバージョンに戻す操作)を利用し、安定した状態へ復帰します。 |
コード編集中に失敗して作業が進められない | 直前の状態に戻る手段(例:作業を元に戻す操作)を使い、再度作業を開始します。 |
- 実験的な変更の安全な試行
別の作業ラインを切り離して実験することで、メインラインへの影響を最小化できます。
発生する問題 | 解決方法 |
---|---|
新機能を試した結果、メインラインが破損する恐れ | 実験用の作業領域を別に設け、問題がなければメインラインへ統合します。 |
実験が失敗しても作業に影響を与えたくない | 実験前の状態へ戻す手段(例:作業を元に戻す操作)や、一時的に変更内容を退避させる手段(例:作業内容を一時保管)を利用します。 |
ユースケースと具体例
Gitを使ったさまざまなユースケースと、その具体的な実行例をローカル環境とリモート(GitHub)で整理しています。
ローカル環境の操作をマスターしたら、リモート環境でさらに便利な機能を使うことができるので、頑張って身につけましょう!
ユースケース | 具体例(ローカル) |
---|---|
バージョン管理 | 変更を段階的に記録し、必要に応じて過去の状態へ戻せる |
実験的開発 | 新しい作業領域を別に設けて試行し、失敗してもメインの作業には影響を与えない |
ドキュメント管理 | 文章やマークダウンを段階的に保存し、誰がいつどのような変更を行ったかを確認できる |
ユースケース | 具体例(リモート/Github) |
---|---|
チーム開発 | 複数人が同時に作業し、変更を共有するためにリモートのコピーと同期を取る |
コードレビュー | 他人が提出した変更内容を確認し、コメントや承認・拒否の判断を行う |
CI/CD | 変更がリモートに送られると自動的にテストやデプロイの処理が実行される |
静的サイト生成 | Jekyll や Hugo などを使い、リポジトリ内のファイルからウェブサイトを生成し GitHub Pages に公開する |
Gitを使ったチーム開発の実践例
ある開発チームがアプリを作成しているとします。
メンバーAがログイン機能を実装し、メンバーBがUIデザインを修正する場合、Gitではそれぞれの変更を別々のブランチで管理し、問題ない場合にマージすることができます。
もしログイン機能にバグがあったとしても、その変更を取り消したり特定のバージョンに戻したりできます。
Gitでできること
Gitを使うと以下のようなことができます。
Gitの主なコマンド
これまでの章で、Gitは分散型バージョン管理システムとして、コードの変更履歴を詳細に追跡しつつ、複数人で同時開発を容易にすることを解説しました。
以下では、日常的な開発フローで頻繁に使われる主要なGitコマンドとその用途を紹介します。
用途 | Git コマンド例 |
---|---|
新規プロジェクト作成 | git init |
ファイルをステージに追加 | git add <file> |
コミット(初期コミット) | git commit -m "初期コミット" |
リモートにプッシュ | git push origin main |
ローカルブランチ作成&切替 | git checkout -b feature-x |
マージ(featureブランチをmainへ統合) | git merge feature-x |
コミットを戻す(やり直し) | git reset --soft HEAD~1 |
コミットを破棄 | git reset --hard HEAD~1 |
リモートブランチを追跡 | git branch --set-upstream-to=origin/main main |
タグ作成(リリースバージョン) | git tag v1.0.0 |
スタッシュ保存(作業内容を一時退避) | git stash |
スタッシュ適用(最新の退避内容を戻す) | git stash pop |
スタッシュ削除(特定の退避内容を消す) | git stash drop <stash@{n}> |
Gitで行う主な作業イメージ
- ローカルリポジトリの作成:
git init
でプロジェクトフォルダを初期化します。 - ファイルのステージングとコミット:
git add
で変更をステージし、git commit -m "メッセージ"
で履歴に残します。 - ブランチの活用:
git checkout -b <branch>
で機能ごとに分岐し、作業後はgit merge <branch>
で統合します。 - ローカル履歴の確認:
git log --oneline
やgit status
で現在位置と変更状況を把握します。
以降の章で、インストール手順や具体的な作業イメージの詳細を解説しているので、是非ご覧ください。
Git導入手順
macOSでGitを導入する最も簡単な方法はHomebrew(パッケージ管理システム)を使用する方法です。以下に手順を詳しく説明します。
前提条件
- macOS Sequoiaがインストールされていること。
- ターミナル(Terminal)アプリを起動できること。
手順1:Homebrewのインストール(まだ導入していない場合)
Homebrewは、macOS用のコマンドラインツールで、さまざまなソフトウェアを簡単にインストールできます。
以下のコマンドをターミナルで実行してHomebrewをインストールします。
Xcode Command Line Toolsのインストール(未導入時)
Homebrewをインストールする前に、開発環境として必要なツールをインストールします。
xcode-select --install
ダイアログが表示されるので「Install」をクリックし、完了まで待ちます。
Memo
- MacOS Sequoia では Xcode Command Line Tools が git 2.43 を含む(確認は
git --version
)。- 公式ドキュメント:https://developer.apple.com/documentation/xcode/command_line_tools(Apple Developer のページ)
Homebrew のインストール(未導入時)
HomebrewはmacOS用のパッケージ管理システムです。
/bin/bash -c "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/HEAD/install.sh)"
Xcode Command Line Tools、Homebrewの概要やインストールの詳細については、以下の記事も是非ご覧ください。
手順2:Gitのインストール
Homebrewを使ってGitをインストールするには、以下のコマンドを実行します:
brew install git
インストールが完了したら、Gitのバージョンを確認します:
git --version
出力例:git version 2.51.0
(2025.9.1時点:バージョンは更新されている可能性があります)
手順3:環境変数の設定(必要に応じて)
macOS Catalina以降では、Gitのインストール時に自動的にPATH
環境変数が設定されるため、特別な操作は不要です。もしターミナルでgit
コマンドが認識されない場合は、.bash_profile
または.zshrc
ファイルにパスを追加してください。
例(.zprofile
ファイルを編集する場合):
# 環境変数の設定
echo 'export PATH="/opt/homebrew/bin:$PATH"' >> ~/.zprofile
# 環境変数の再読込
source ~/.zprofile
# PATH の確認(Homebrew が優先されていることを確認)
echo $PATH
手順4:設定の初期化
Git でコミットを行う際に、誰が変更したかを明確にするためにユーザー名とメールアドレスを設定します。
これらは Git のコミットメッセージの「作者情報」として記録され、後から変更履歴を追跡する際に重要です。
以下のコマンドでグローバル設定(すべてのリポジトリに適用)を行います。
# ユーザー名・メールアドレスを設定(Git のコミット情報)
git config --global user.name "山田 太郎"
git config --global user.email "taro@example.com"
設定が正しく行われたか確認するには、次のコマンドを実行してください。
# 現在設定されているユーザー名とメールアドレスを表示
git config --global user.name
git config --global user.email
これらのコマンドがそれぞれ 山田 太郎
と taro@example.com
を返せば、設定は正常に完了しています。もし空の値が返る場合や別の値が表示される場合は、再度 git config --global
で設定し直してください。
ローカル動作確認
Gitの基本的な操作をマスターするために、ローカルリポジトリを作成して操作するまでの一連の作業を行います。
以下の作業を順番に行っていくことで、基本の操作がステップバイステップで身につきますので、着実にやっていきましょう!
- 手順1:ローカルリポジトリの作成:空のフォルダを作成し、
git init
でGitリポジトリを生成。 - 手順2:ファイルの追加とステージング:READMEなど新規ファイルを作成し、
git add
でステージ。 - 手順3:コミットの実行:
git commit -m "メッセージ"
で変更を永続化。 - 手順4:ファイルの編集と再コミット:既存ファイルを変更し、再度ステージ&コミット。
- 手順5:コミットの取り消し:
git reset --hard HEAD~1
などで誤ったコミットを消去。 - 手順6:履歴の確認:
git log --oneline
で過去コミットを閲覧。 - 手順7:ブランチ操作:新規ブランチ作成、変更をコミットし、
git merge
で統合。
手順1:ローカルリポジトリの作成
新しいフォルダを作成し、その中でGitリポジトリを初期化します。
# 新しいディレクトリを作成
mkdir my-first-git-repo
cd my-first-git-repo
# Gitリポジトリを初期化
git init
実行後、my-first-git-repo
フォルダ内に.git
という隠しフォルダが作成されます(このフォルダはGitによって管理される内部データを保存します)。
手順2:ファイルの作成とステージング
新しいファイルを作成し、Gitの管理下に置きます(ステージングと呼びます)。
# 新しいファイルを作成(例:README.md)
echo "# My First Git Repository" > README.md
# 作成したファイルの状態を確認
git status
git status
を実行すると、README.md
が「Untracked files」(追跡されていないファイル)として表示されます。
このファイルをGitで管理するには、git add
コマンドを使ってステージングします。
git add README.md
再度git status
を実行すると、「Changes to be committed」(コミットされる予定の変更)として表示されます。
手順3:コミットの実行
ステージングされたファイルを永続的に保存するには、git commit
コマンドを使用します。オプション-m
でコミットメッセージを指定します。
git commit -m "Add README.md"
コミットが成功すると、以下のような出力が表示されます:
[main (root-commit) 1a2b3c4] Add README.md
1 file changed, 1 insertion(+)
create mode 100644 README.md
手順4:ファイルの変更と再コミット
作成したファイルを修正し、再度コミットします。
# README.mdを編集(例:末尾に一行追加)
echo "This is my first Git repository." >> README.md
# 変更内容を確認
git status
git status
で「Modified」と表示されるので、ステージングとコミットを行います:
git add README.md
git commit -m "Add README.md with description"
手順5:コミットの取り消し
誤ったコミットを取り消す方法について学びます。
方法 | コマンド |
---|---|
直前のコミットをやり直す | git reset --soft HEAD~1 (ステージは残る) |
直前のコミットを完全に消す | git reset --hard HEAD~1 |
コミットを別のブランチへ戻す | git revert HEAD (新しいコミットで元に戻る) |
以下のコマンドで直近のコミットを取り消します(未ステージ状態に戻る)。 |
git reset --hard HEAD~1
HEAD
:最新のコミットを指します。~1
:一つ前のコミットを意味します。
注意:この操作は取り消せないため、実行前にgit log
でコミット履歴を確認することをおすすめします。
手順6:コミット履歴の確認
過去のコミットを確認するにはgit log
コマンドを使用します。
git log --oneline
出力例:
1a2b3c4 (HEAD -> main) Add README.md
d4e5f67 Update README.md with description
手順7:ブランチ操作
ここではブランチを作成し、変更をコミットしてメインにマージする一連の操作を説明します。
git checkout -b feature-readme2 # 新規ブランチ作成+切替
# 変更をコミット
echo "This is my first Git branch." >> README2.md
git add README2.md
git commit -m "Add README2.md with description"
# メインへマージ
git checkout main
git merge feature-readme2
# マージ後は不要なら削除
git branch -d feature-readme2
導入に当たっての注意点
Gitを初めて使用する際には、以下のポイントに注意しましょう。
- コミットメッセージの明確化:コミットメッセージは「どのような変更をしたか」がわかるように記述します(例:
Fix login bug
の方がUpdate code
より良い)。 - .gitignoreファイルの作成:Gitで管理しないファイル(例:
node_modules/
、.env
)を指定します。作成方法はGitHubのガイドを参照してください。 - 定期的なプルとプッシュ:リモートリポジトリとの差分を常に確認し、競合を防ぎます。
- ブランチ名の適切な命名:機能ごとに分ける(例:
feature/login
、bugfix/payment
)ことで整理しやすくなります。
エディターとの連携
Gitは主にコマンドラインで操作されますが、多くのテキストエディターやIDEでGitと連携する機能があります。
よく使われる組み合わせと設定例は以下の通りです。
1. Visual Studio Code(VS Code)
- Gitリポジトリの表示:左下の「ソース管理」アイコンから変更履歴を確認できる。
- 統合ターミナル:コマンドライン操作を直接実行できる。
- 拡張機能:「GitLens」などでさらに詳細なコミット情報を表示。
2. Atom
- Gitパネル:サイドバーに変更されたファイルの一覧が表示される。
- パッケージ:
git-plus
などで簡単にコミットやプッシュができる。
3. Sublime Text
- Git Sidebar Enhancements:サイドバーからGit操作を実行できる拡張機能。
エディタ | 設定例 |
---|---|
VS Code | git config --global core.editor "code --wait" GitLens 拡張でブランチ・コミット履歴が表示 |
Atom | atom-settings-view で git-path 設定可能 |
Sublime Text | Preferences → Package Settings → Git → Settings – User に "git_path": "/opt/homebrew/bin/git" を追加 |
他のツールとの比較
Git以外にもいくつかのバージョン管理ツールが存在しますが、Gitは現在最も広く使用されているツールです。
主な比較は以下の通りです。
ツール | 主な特徴 | Git の代替としての評価 |
---|---|---|
GitHub Desktop | GUI で簡単操作、Pull Request 管理も可 | Git の機能は基本的に同等だが CLI が必要な場合は不便 |
SourceTree | 無料、マルチプラットフォーム、複雑なブランチも可視化 | Git の低レベル操作はやや限定的 |
GitKraken | 視覚化に優れ、チーム管理機能付き | UI は良いが無料版は機能制限 |
Mercurial (hg) | Git と同様の DVCS だがコミュニティは小さい | Git の拡張性・エコシステムに劣る |
Perforce | 大規模プロダクト向け、バイナリ管理強力 | Git の分散型モデルとは異なる |
結論:ほとんどの開発プロジェクトではGitが標準的に使用されているため、初心者でもGitを学ぶことが最善です。
参考情報
以下のリソースを活用して、Gitについてさらに深く学ぶことができます。
タイトル | URL |
---|---|
Git 公式ドキュメント(Pro Git Book) | https://git-scm.com/book/en/v2 |
Homebrew Formulae 公式ページ(git) | https://formulae.brew.sh/formula/git |
Git リポジトリ(公式) | https://github.com/git/git |
まとめ
この記事では、macOS SequoiaにGitをインストールする手順から、基本的な操作(リポジトリ作成、コミット、変更取り消し)までを初心者向けに解説しました。
Gitはソフトウェア開発に不可欠なツールで、慣れることで作業効率が大幅に向上します。
今後は、実際のプロジェクトでGitを使用してみたり、リモートリポジトリ(GitHub)との連携を試してみることで、さらにスキルを磨いてください。
初めは難しく感じるかもしれませんが、少しずつ慣れていけば、開発の幅を広げることができるので、習うより慣れろ!で実践してみてください!
「何が起きたか」「次にどうするか」を常に意識しながら、コミットメッセージやブランチ名を整理していくことで、開発の品質も自然と向上します。
あなたのMacを快適な開発環境にしましょう!