
前回の記事では、爆速エディタZedの魅力とインストール方法について解説しました。無事にZedをインストールし、その軽快な動作に驚かれた方も多いのではないでしょうか?
しかし、エディタはインストールして終わりではありません。日々の開発で最も頻繁に行う「ファイル操作」や「テキスト編集」をいかに効率的に行うかが、あなたの生産性を大きく左右します。
「マウスに手を伸ばす回数を減らしたい」「もっと効率的にコードを編集したい」「エディタの基本操作でつまずいて、本来のコーディングに集中できない」
そんな悩みを抱えているあなたのために、本記事ではZedの「キーボード中心」という思想に基づいた、プロジェクトの開き方からファイル操作、テキスト編集の基本までを徹底解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたはZedを使って、まるで手足のようにコードを操れるようになっていると思います。
対象読者
- Zedをインストールしたばかりで、次に何をすればいいか知りたい方
- マウス操作から脱却し、キーボードだけで効率的に開発を進めたい方
- Zedの基本操作を体系的に学びたいジュニアエンジニア
- 開発効率を向上させたいすべてのソフトウェア開発者
目次
- プロジェクトとファイルを開く
- コマンドラインから
zed .
で開く - ファイルスイッチャー(
Cmd-P
)での高速なファイル移動
- コマンドラインから
- テキスト編集の必須テクニック
- マルチカーソルでの同時編集
- Vimモードへの切り替え方
- コマンドパレットを使いこなす
- コマンドパレット(
Cmd-Shift-P
)とは? - これだけは覚えたい!便利なコマンド3選
- コマンドパレット(
- 拡張機能でZedをパワーアップ
- 拡張機能の探し方とインストール
- おすすめ拡張機能3選
- これからのZed:ロードマップと期待の新機能
- FAQ
- Q1: Zedでファイルを保存するにはどうすればいいですか?
- Q2: VS Codeのショートカットに慣れているのですが、Zedでも使えますか?
- Q3: Zedの拡張機能は今後増えていきますか?
- まとめ
プロジェクトとファイルを開く
Zedでの開発は、プロジェクトを開くことから始まります。Zedはキーボード中心の操作を推奨しており、プロジェクトやファイルの開閉も非常にスムーズに行えます。
コマンドラインから zed .
で開く
最も基本的なプロジェクトの開き方は、ターミナルから zed .
コマンドを使用することです。これは、現在のディレクトリをZedでプロジェクトとして開くことを意味します。この機能を利用するには、まずZedのCLIツールをインストールする必要があります。
- CLIツールのインストール
Zedを起動し、メニューバーから「Zed」>「Install CLI」を選択して、CLIツールをインストールします。 - ターミナルを開く
開発したいプロジェクトのルートディレクトリに移動します。 zed .
を実行
以下のコマンドを実行します。
zed .
これにより、Zedが起動し、指定したディレクトリがプロジェクトとして開かれます。プロジェクト内のファイルツリーがサイドバーに表示され、すぐに開発に取り掛かることができます。
ファイルスイッチャー(Cmd-P
)での高速なファイル移動
プロジェクトを開いたら、次に必要となるのは目的のファイルに素早くアクセスすることです。Zedのファイルスイッチャーを使えば、マウスに触れることなく、キーボードだけで瞬時にファイル間を移動できます。
- ファイルスイッチャーを開く
Cmd-P
(macOS) またはCtrl-P
(Linux/Windows) を押します。画面上部に検索バーが表示されます。 - ファイル名を検索
検索バーに、開きたいファイル名の一部を入力します。Zedはプロジェクト内のファイルをリアルタイムで検索し、候補を表示します。例えば、「index.js」を開きたい場合は「ind」と入力するだけで候補が表示されるでしょう。 - ファイルを開く
上下の矢印キーで目的のファイルを選択し、Enter
キーを押すと、そのファイルがエディタで開かれます。
[!TIP]
ファイルスイッチャーは、曖昧検索に対応しています。ファイル名の途中の文字や、ディレクトリ名とファイル名を組み合わせた検索も可能です。例えば、「src/components/Button.tsx」を開きたい場合、「s/c/b」や「button」といった入力でも候補が表示されます。また、最近開いたファイルも履歴として表示されるため、頻繁にアクセスするファイルへの移動も簡単です。
テキスト編集の必須テクニック
Zedは、キーボード中心の効率的なテキスト編集機能が豊富に用意されています。ここでは、特に覚えておきたいテクニックをいくつか紹介します。
マルチカーソルでの同時編集
複数の箇所を同時に編集したい場合、マルチカーソル機能が非常に便利です。同じ単語を一括で変更したり、複数の行に同じ内容を挿入したりする際に役立ちます。
- 同じ単語を複数選択
変更したい単語にカーソルを合わせ、Cmd-D
(macOS) またはCtrl-D
(Linux/Windows) を繰り返し押します。押すたびに、同じ単語が次々に選択され、カーソルが追加されます。 - 同時編集
複数のカーソルがある状態で文字を入力すると、すべてのカーソル位置で同時にテキストが編集されます。
// 変更前
const userFirstName = "John";
const userLastName = "Doe";
const userEmail = "john.doe@example.com";
// Cmd-D (Ctrl-D) で "user" を複数選択し、"customer" に変更
const customerFirstName = "John";
const customerLastName = "Doe";
const customerEmail = "john.doe@example.com";
Vimモードへの切り替え方
Vimユーザーの方には、ZedのVimモードがおすすめです。Vimの強力なキーバインドをZedで利用することで、さらに効率的なテキスト編集が可能になります。
- コマンドパレットを開く
Cmd-Shift-P
(macOS) またはCtrl-Shift-P
(Linux/Windows) を押します。 - Vimモードを検索
検索バーに「Toggle Vim Mode」と入力し、表示されたコマンドを選択してEnter
キーを押します。 - Vimキーバインドの利用
Vimモードが有効になると、Vimのノーマルモード、挿入モードなどのキーバインドが利用できるようになります。再度同じコマンドを実行すると、Vimモードを無効にできます。
コマンドパレットを使いこなす
Zedのコマンドパレットは、エディタのあらゆる機能をキーボードから呼び出すための強力なツールです。これを使えば、メニューを探したり、マウスに手を伸ばしたりすることなく、必要な操作を瞬時に実行できます。
コマンドパレット(Cmd-Shift-P
)とは?
コマンドパレットは、Zedの「脳」とも言える機能です。ファイルを開く、設定を変更する、Git操作を行う、AI機能を呼び出すなど、Zedでできることのほとんどすべてを、このコマンドパレットから実行できます。
ショートカットは Cmd-Shift-P
(macOS) または Ctrl-Shift-P
(Linux/Windows) です。
これだけは覚えたい!便利なコマンド3選
コマンドパレットには膨大な数のコマンドがありますが、まずは以下の3つを覚えておくと、日々の開発が格段に快適になります。
workspace: new file
(新しいファイルの作成)
新しいファイルを素早く作成したいときに使います。プロジェクト内で新しいコンポーネントやモジュールを作成する際に便利です。Go to File…
(ファイルに移動)
プロジェクト内の任意のファイルに素早く移動できます。ファイルスイッチャー(Cmd-P
/Ctrl-P
)と同様に、ファイル名の一部を入力して候補を絞り込み、瞬時に目的のファイルを開けます。zed: open default settings
(デフォルト設定を開く)
Zedのデフォルト設定ファイルを開きます。エディタの挙動や外観をカスタマイズする際に、どのような設定項目があるかを確認するのに役立ちます。
[!TIP]
コマンドパレットでは、コマンドの完全な名前を入力する必要はありません。例えば、「Theme: Toggle」を呼び出したい場合、「theme」や「toggle」と入力するだけで候補が表示されます。また、よく使うコマンドは履歴として上位に表示されるため、使えば使うほど効率が上がります。
拡張機能でZedをパワーアップ
Zedの拡張機能エコシステムはまだ発展途上ですが、今後の成長が非常に期待されています。現時点でも、いくつかの便利な拡張機能が利用可能です。
拡張機能の探し方とインストール
Zedの拡張機能は、コマンドパレットから探してインストールできます。
- コマンドパレットを開く
Cmd-Shift-P
(macOS) またはCtrl-Shift-P
(Linux/Windows) を押します。 - 拡張機能を検索
「zed: extensions
」と入力し、表示されたオプションを選択します。拡張機能ギャラリーが表示され、利用可能な拡張機能を検索・インストールできます。 - 拡張機能をインストール
インストールしたい拡張機能を選択し、「Install」をクリックしてインストールします。
[!NOTE]
Zedの拡張機能は、VS Codeの拡張機能とは異なる独自の形式で開発されています。そのため、VS Codeで慣れ親しんだ拡張機能がそのままZedで使えるわけではありません。しかし、Zedの開発チームは強力なプラグインAPIの提供を目指しており、今後のエコシステムの拡大に期待が寄せられています。
おすすめ拡張機能3選
現時点で利用可能な、または将来的に期待される拡張機能の中から、特におすすめの3つを紹介します。
- Catppuccin (テーマ):
多くの開発者に愛用されている人気のテーマです。Zedの見た目を自分好みにカスタマイズしたい方におすすめです。目に優しく、コードの可読性を高める美しいカラースキームを提供します。 - Material Icon Theme (アイコンテーマ):
ファイルの種類に応じて、視覚的に分かりやすいアイコンを表示するテーマです。ファイルツリーやタブでファイルを探す際に、一目で種類を判別できるようになり、エディタの使いやすさを向上させます。 - LaTeX (言語サポート):
科学技術文書の作成に広く用いられる組版システムLaTeXの言語サポートを追加する拡張機能です。構文ハイライトや補完機能を提供し、ZedでLaTeX文書を効率的に編集できるようになります。
[著者の経験談]
Zedの拡張機能はまだ少ないですが、コア機能が非常に強力なので、現時点でも十分快適に開発できています。むしろ、余計な機能でエディタが重くなることがないため、集中してコードを書けるというメリットもあります。必要な機能は今後、コミュニティの力で充実していくことを期待しています。
これからのZed:ロードマップと期待の新機能
Zedはまだ開発途上のエディタであり、活発に開発が進められています。開発チームは、ユーザーからのフィードバックを積極的に取り入れ、常に進化を続けています。公式ブログやGitHubリポジトリでは、今後のロードマップや期待される新機能について情報が公開されています。
- プラグインAPIの強化: より柔軟で強力なプラグインAPIが提供されることで、コミュニティによる拡張機能の開発がさらに加速するでしょう。
- より高度なAI連携: 現在のAI機能に加え、コード生成、デバッグ支援、テストコード生成など、より高度なAI連携機能が期待されます。Zed 1.0では「Agentic Editing」や「Multi-Agent Collaboration」が計画されています。
- Web版の提供: ロードマップには、Zed 1.0以降の目標として「Zed on the Web」が記載されています。これにより、どのデバイスからでもWebブラウザを通じてZedにアクセスし、プロジェクトを開くことができるようになるでしょう。
[!NOTE]
ロードマップは開発状況によって変更される可能性があります。最新の情報は、Zedの公式ウェブサイトやGitHubリポジトリをご確認ください。
FAQ
Q1: Zedでファイルを保存するにはどうすればいいですか?
A1: Zedには自動保存機能がありますが、デフォルトでは無効(”off”)になっています。settings.json
ファイルで on_focus_change
に設定することで、エディタのフォーカスが変更された際に自動的に保存されるようになります。手動で保存したい場合は、Cmd-S
(macOS) または Ctrl-S
(Linux/Windows) を使用できます。
Q2: VS Codeのショートカットに慣れているのですが、Zedでも使えますか?
A2: Zedは独自のキーバインドを持っていますが、キーマップをカスタマイズすることでVS Code風のキーバインドに近づけることが可能です。Cmd-,
(macOS) または Ctrl-,
(Linux/Windows) で設定ファイルを開き、settings.json
やキーマップファイルを編集できます。また、コマンドパレットから「zed: open keymap file
」アクションや、Ctrl-K Ctrl-S
でキーマップエディタを開いて編集することも可能です。
Q3: Zedの拡張機能は今後増えていきますか?
A3: はい、Zedの開発チームは拡張機能エコシステムの拡大に力を入れています。ロードマップには「Extensions API」の強化が目標として掲げられており、コミュニティの活性化を通じて、今後多くの拡張機能が登場することが期待されます。公式の発表やコミュニティの動向に注目しましょう。
まとめ
本記事では、Zedエディタにおけるプロジェクトの開き方、ファイルスイッチャーを使った高速なファイル移動、マルチカーソルやAI機能、Vimモードといったテキスト編集の必須テクニック、そしてコマンドパレットの活用方法について解説しました。
Zedの「キーボード中心」という思想を理解し、これらの基本操作をマスターすることで、あなたはマウスに頼ることなく、思考のスピードでコードを編集できるようになるでしょう。これは、あなたの開発効率を飛躍的に向上させるための第一歩です。
今日から意識して、マウスを使わずにZedを操作してみてください。特にファイルスイッチャー(Cmd-P
/ Ctrl-P
)とコマンドパレット(Cmd-Shift-P
/ Ctrl-Shift-P
)は、Zedを使いこなす上で最も重要なツールです。まずはこの2つのショートカットを体に覚え込ませましょう。
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免責事項
本記事は、Zedエディタに関する情報提供を目的としています。記事の内容は執筆時点での情報に基づいており、Zedエディタの今後のアップデートや変更により、内容が古くなる可能性があります。情報の利用は読者自身の判断と責任において行ってください。本記事の情報に基づいて発生したいかなる損害についても、著者は一切の責任を負いません。